愛知で原画見て爆泣きして観光しながら食い倒れてきた

原画展感想

では早速原画展の感想や思ったことをつらつらと。

順路通り、「Ⅰ 王子の森の仲間たち」から。

最初は王子製紙のカレンダーに採用された絵が並んでいたのでじっくりと最初から見て、やっぱり緑がうつくしいなあ、とか、冬の寒そうな雪が、それでもふわふわと柔らかそうで、でも近づいて見てみると一点一点手で精細に打たれた点が、あるいはべたりと筆が乗った軌跡がそのふわふわを作っているのだと知ります。

私はやっぱり、なんとも不思議な森の姿が好きで。磯野宏夫氏と言えば緑だなあ、とか、空の吸い込まれそうな紺や青だなあ、と、思っています。それ以外ももちろんあるけれど、私自身が一番に好きなのは、あの森なんだよな、と。

王子製紙のカレンダーの絵は、実際に王子製紙が所有する森に作者自身が赴き、現地の職人達と対話し、そして持ち帰ったもので描いたと初めて知りました。
そんな日本や外国に森を持ってるんだなあ、とか、知っている土地の作品を見ると嬉しくなったり、日本の森のはずなのに、外国のにおいがしたり。

いろんな、森がありました。あそこには世界の森林があります。緑は美しい。とっても。

原画をぐるりと一周したあと、最後にどこの場所なのかが作品ナンバーと共に地図で示されています。もしかしたらご縁のある土地が中にはあるかもしれません。私はありましたので後ほど見に戻りました。

さて次。

フロアを移動すると、今度は「Ⅱ 冒険の森」のエリアです。

ほとんどが森、植物の自然物、そして動物、という作品だけれども、たまに人間の姿が描かれます。

それが少年。作者である磯野宏夫氏の分身のような、彼の子供時代をそこに閉じ込めたような。

ちょっとさすがに記憶力がそこまで良くないですしメモも取ってなかったのできちんと覚えていないのですが、そういうニュアンスで説明があったのです。

この章で、私やっと気付いたんですが、白い背景で大きな大きな樹に人が沢山上り、ツリーハウスのようになっていて、枝の先につけたブランコをこぐ子供もいれば、てっぺんまでに伸びたはしごがありそこを上るものもいる。そんな素敵な絵があるのですけれど、そこが白背景だからこそ気付けたんですよね、樹の描き方が大まかな色を載せた後に光の入る部分だけ白で潰してシルエットを出していることに。

10年前は全く気づけなかった。そんな風に見る目もなく、また人も大勢いたのでしっかりと見た方ではあるけれどやはり背後を気にしながらなので注意力は散漫になりがちです。鑑賞する場合はやはり、自分本位でばっかりではよくないですから。

もうそこから、じーーーーーーーっと見るのが楽しくて楽しくて仕方なくなりまして。

そしてね、やってくるわけです。

「Ⅲ 聖剣伝説」

トップバッターは聖剣伝説2の、あのたぶんもっとも有名な、太い幹、茂る木々とエキゾチックな植物たち、その中を朱い鳥が二羽優雅に羽を広げ、根元には少年少女三人が樹を見上げている。

ファンタジーの極まった絵。

知らない場所なのに、どこかにありそうで、ぎゃっぎゃっと南の土地にいそうな鳥の鳴声が聞こえてきそうな。きっと湿った空気があって、でもどこか神聖で。

聖剣伝説には「聖域」が出てきます。説明しなくても、ただ見るだけで理解できる、女神のいる場所。聖剣の眠る場所。

私は聖剣伝説2は大人と言われる年齢になってからプレイしました。たったの一度だけで、比べると子供の頃にプレイした聖剣3よりも遙かに記憶は薄く、トンデモ展開に「ええええ」と言ったことの方が多いかもしれません。

でも、それでも、この森はここから始まっているのです。
聖剣の森は、この絵から始まっているのです。

一体何度見ただろう、というくらい目にした絵の原画が目の前にあると思ったらもうなんか駄目でぐいぐい目に涙たまってきてしまって、なんとか涙をこぼさないように頑張ったんですけれども聖剣3の絵を見たら駄目になりました。もうこみ上げてこみ上げて瞬きを繰り返しても駄目でそれでもじっくりしっかりたっぷり見たくて。

聖剣3のワールドマップはですね、こんなきれいなワールドマップ今までみたことある?否!!!!!!!!!!!!!っていうくらい綺麗で綺麗でどうしようもなくて、小学生の頃、スーファミの取説で穴が開く(物理)ほど眺めた絵です。

それが目の前にあるんですよ。無理無理。もうむり。そこに子供の頃の私がいるのです。ゲームをなかなか出来ない家庭でしたから、限られた時間の中、姉のもちものなので更に制限があって、それでも手にしたコントローラーは憧れのもので、それを初めて手にしたときはうれしくて、うれしくて、うれしくて。

そういうことまで余計に思い出してしまうからだめなんですよね~~~~~~~~~~~~~

10年前のあのときも、私はやっぱり聖剣3の絵の前で泣けてしまって、その頃はちょうど磯野宏夫氏が亡くなったばかりの頃でもあったから余計に感傷的にもなっていたのがあったんですが、それでもまた原画を見る機会を得られて本当に良かった。

10年前は見ることの出来なかった細部までをやっと見ることができて、本当に、うれしかったしもう見たことのある絵なのに新しい発見がたくさんあって。

10年前は見ることが出来なかったのは単純に私が気付くことが出来なかったんですけども。

原画だと分かる筆致、ってあるじゃないですか。

私、聖剣3のイメージビジュアルが本当に大好きなんです。ゲームでは取説の表紙として使われている絵ですね。

マナの聖域で子午線のこどもたちが佇んで、大きな空に大きな月、欠けた部分を突き刺すように城のシルエットが浮かぶ、ピンクの海とも空とも言える混ざった境界線。

西洋とは異なる雰囲気の森なのに、洋服を身につけた主人公達がなぜか違和感なく溶け込む世界が不思議で、不思議で、不思議で。

ただひとくちにファンタジーというには足りない世界の絵です。

この、月のシルエット。いままで気付かなかったんですけれど、原画を見ると月はまあるいのです。欠けたように見える右下の青の部分も月の稜線を残しています。
星の散る空も、その円の中には入らずきっちりと避けられているのです。

それに気付いた時、食い入るように見つめました。何故かはわからないけれど。ただ単純にこれまで気付かなかったことに気付いたのが嬉しかったのかもしれませんが。

そして展示順としては飛ばしてしまっていましたが、よくいない子扱いされてしまう聖剣4のパッケージイラストが真ん中に展示されていました。

この、聖剣4の絵が、とっても大きいんですよ。他の絵と比べるべくもなく。倍以上はあったかな。

こんなに大きいと思わなくて、そして自分の身長と同じくらいの大きな絵に、見上げるほどの樹が描かれている。そして真ん中には少女の背中。

プレイをしていないので聖剣4のゲーム自体に対するコメントが出来ないのですが、神話を表すかのようなその景色は、口をつぐんでただ見上げるしか出来ない、不思議な力をもっているのです。

そうして、そこに聖剣2、3、4のイラストが並んでいるのですが、それぞれ発売年の一年前に描かれている者です。1992年、1994年、2005年にそれぞれ描かれています。

それがね、横並びになっているんですよ。

ということは、細部を見ると、描き方が変わっているわけです。

同じ聖剣のシリーズで、年数の経過による描き方を見比べる事が出来る、というなんとも大層贅沢な時間を過ごすことが出来てしまうのです。ブラボー!!!!!!!!!!!

全てを一周したあと、ほとんどここの聖剣のエリアにいました。
もちろんもう二周目以降ですから他の方がいらっしゃったら離れてどうぞどうぞしましたと自己擁護させて頂き……

人の波がはけたあとはもうね~~~~~~~~~~じ……………………っくり、拝見しました。

(まあつまりそういう挙動が出来るくらい人がいないです。とてもゆったりとした感じです。ただこれから夏休みに入っていくと思うのでまた違ってくるかもしれません。)

特にやはり、10年も経つと細部の書き込みが洗練されていっていて、聖剣4と2、3を見比べるのがとっても楽しかった……聖剣4の場合は他の2シリーズとはちがいサイズが大きいということもあって細部の書き込みをより出来たのだろうな、とは思いますが、それにしたって磨かれていった技の集合体みたいな線や点は、いっくら見ても楽しく、美しく、そして一旦また遠ざかり全体を眺めれば、目にきちゃう。

すばらしかったー……とってもすばらしかった…………

そして「Ⅳ 熱帯黙示録」へ。

森林破壊を嘆く作品が続きます。

くろいくろい世界。樹が切り倒され、切り株となり灰色になった森、だったものの真ん中、寂しそうな象が一頭いる絵が、見れば見るほどに強い怒りを伝えてくる。そしてさびしさ。故郷を追われる動物たちの嘆き、人間の愚かしさ。全部詰まっているようだった。

思い入れがあるわけでもなく、ただそこで目にしただけだというのに涙が零れる。なくした森を悲しくおもう。そんな力を持つ絵がみっつ続く。

あおあおとした、生命力の塊みたいな樹はひとつもなく、涙を流すように朱い、朱い血のような色が暗い色合いのなか不気味にしたたるような絵ばかりだった。怖い、と感じるくらいに。

生命の絶たれた森を、自身が削られるように悲しんだ氏だからきっと、そんな絵になったんだろうなと。

忘れたくない絵だった。

その隣に「Ⅴ 晩年」の作品が続いていく。

そこにあった「黄昏のソロモン海」が、その前で悲しみで削られた心臓に絆創膏をぺたぺたぺたぺた貼ってくれたようだった。

幻想的な水色の空にピンクの雲が広がって、ほのかにあかるい黄色の空に続いていく。その空を背に、青い大きな樹が、森が、ひとつの色調で描かれる。

ふわっとなにか、良い匂いがするような、現実のようで、夢のようで、その狭間のありそうで、なさそうで、でもどこかにあったら素敵だな、と思える風景。

最初の方に書いたけれど、磯野宏夫氏の絵で好きなのは森、緑の、神様みたいな緑の樹。

だけど、この「黄昏のソロモン海」はそんな私自身の好みを吹っ飛ばしてなんてすてきな光景だろう、という気持ちでこの胸をひたひたと満たした。

晩年は、体調のこともありフィールドワークに出ることが難しくなっていったことから、過去の出かけた場所やその時に得た資料をもとに描いていたそう。
だから現実と夢の狭間のような、ファンタジーに寄りつつもまだ現実にあるような、絵が描かれたのでは、とたしか解説にはあった気がする。何分メモ取ってないのでおぼろげ記憶で失礼します。

だからこそ、この晩年の作品群はさわやかな気持ちを最後に届けてくれてもいた。

幻想的な光と虹の差し込む森でくつろぐ動物たちの姿、楽園かもしれないし、どこかの森に迷い込んだら、もしかしたら見れる光景かもしれない。

最後の最後、絶筆があった。
解説を読むまで、それが描きかけだと気づけなかった。
たしかによく見てみたら背景の書き込みが足りておらず、全体を調整しながら作業を進めていく筆致を感じる事ができた。

けれどそこで、手が止まってしまったことでもある。

絶筆の絵の隣のガラスケースに、当時使われていたパレットも展示されていた。
それからブラシと、ハケと、烏口、面相筆。
エアブラシは違う、ということで網とハケを使っていたと……まあそもそものこまかい書き込みは面相筆でのひとつひとつの点描という気が遠くなる描き方をされていますが。

それから懐かしいスーファミのパッケージ。聖剣2が一緒に展示されていました。

は~~~~~~~~~~~~…………緑の森を思い出して、書くの、楽しかったけど、途中で泣きながら書いていたので時間がかかってしまった。

どうか、興味のある方は、原画を、原画を見に行って下さい。素晴らしい森の姿がたくさん、ありますので…………!

それから館内トイレの奥の道を右に曲がって右に曲がっていくとミュージアムショップもあります。ポストカードとか画集とかマステ売ってます。マステ買った!緑と青のすてきな色。どこにつかおうかな。

あと段ボールアートが展示されているんですけれどもいろいろ疲れていてチェック怠ったらSNS投稿で紙製ファイルもらえるっていうのを帰ってから気付きましたちくしょーーーーーーーーー!!!!!!!!!!
おねがい!!!!!!!!!!もっっっと!!!!!!!!大々的に!!!!!!!!言って!!!!!!たのむ!!!!!!!!!!

というわけでこれからお出かけになる方はぜひ、段ボールアート(ダンボールアニマル)を撮影してSNS投稿すると貰えるらしいので興味あったらぜひに~~~~~!!マジでもっと宣伝してくれ~~~~~~!!!!!!!!!!

その後に常設展を見ましたが割愛します!感想はまとめ部分にちょこっとだけ書きました!

じゅうぶんおとな。