お熱いうちに召し上がれ

【概要】
盗んでないバイクで走り出して放課後デートしてたこ焼きを食ってくれというツイートをしたらぽんすけさんがイラスト化して下さった( https://poipiku.com/2725584/7624507.html )ので調子乗って書いた。

※謎の現パロ。ヘクターとジェラール様は別高校で放課後にヘクターがバイトして貯めた金で買ったバイクに2ケツしてたこやき食べにきた。


「はいどーぞ」
「? えっと、ありがとう?」
「あーあそこのベンチで食いますか」
「う、うん?」
そう言って並んでベンチに座った二人。ジェラールはどうして良いかわからずにベンチにきちんと座ってほかほかの熱いたこ焼きをただ手に持つしかできない。
「……貸してください」
どか、と少しの衝撃と音と共にヘクターがすぐ隣に座る。
手を差し伸べられて、ああここに移動するまで持っててくれということだったのかと得心したジェラールは笑顔でたこ焼きをヘクターへと渡す。
何もかも新鮮でヘクターの手で開かれるたこ焼きのパックをまじまじと眺めていると、器用な指先が小さな楊枝でまあるいたこ焼きをぷすりと刺してそれを……ジェラールへと。
「えっ」
「ああ、そうか、あっついですもんね」
——これは俗に言う“あーん”というやつか?
そんな思考が脳を一瞬で過っていったのも束の間、ただぽかんと眺めるだけでいたジェラールをよそにヘクターは先程ジェラールへと差し出したたこ焼きをぱくりと己の口へと運んでしまって咀嚼している。
「ん、やっぱうまい。ジェラール様もどうぞ」
ふわふわとかつおぶしが踊り、青のりの香りが鼻をくすぐる。それよりも強いソースの匂いが食欲をそそった。
ごくり。
「た、べて良いのか……?」
「え? 食べるために買ったんですよ」
「君のかと」
「いえ、一緒に食べるならこれで良いかと」
少しの沈黙がおり。そしてヘクターは苦笑しながら「まあどうぞ」とジェラールにたこ焼きをパックごと戻した。
目をぱちくりとさせてジェラールは戸惑ったが、しかしたこ焼きのソースは容赦なく腹を直撃する匂いでジェラールを誘う。
躊躇は一瞬。
ヘクターが使ったのとは別の、もう一つ付いていた楊枝を取って同じように刺し口元へ。
「!」
目をぱっと開いて口の中に広がるおいしさを噛み締める。世界がちょっとだけ輝いて見える。
隣で、ふ、と息の抜けるような笑い声が聞こえた。
「うまいでしょう」
「ああ、とても!」
「良かったです。ああ、もう一個ください」
「もちろんだ!」

じゅうぶんおとな。