ニキータのしあわせ

なつかし再録ふたたび。
2022年の年始め、素敵なネップリ会報誌企画「ミニロップ」さんに突然参加したときのログ。
このお話と私の性癖をぶっ壊した男の絵を寄稿しました。私の性癖をぶっ壊した男の名前はホークアイといいます。

ジャンル:聖剣伝説3
メイン:ホークアイ、ニキータ


 いつだったかニキータはこんなことをホークアイに聞いた。
「アニキはしあわせ?」
 別に何か特別な意味があったわけではない。あの砂の地で、ちょうどおなかいっぱい食べて、それに起因する心地の良い睡魔に襲われていて、それがとても幸せなことだとニキータは思ったから、だからホークアイにも聞きたくなったのだ。
「お前は幸せそうだな、ニキータ」
 ホークアイは目を細めて笑いニキータの毛並みをなぞるように頭を撫でる。その指にニキータはうっとりと喉を鳴らす。
「ぐるぐる……そりゃそうですにゃ……」
 答えが欲しかったわけではなかったから、その手を甘んじて受けた。
 ニキータにとって別に特筆することの無い夜の記憶だ。
 その記憶はもう思い出となっている。それ程に時が経った。
 あの砂の地で過ごした日々、〝仕事〟がうまくいった夜は遅くまで明かりがつき、おなかいっぱい食べて幸せな気持ちで夢に旅立った。ゆらゆらと頼りなく揺れる明かりの中で漣のように心地よく響く仲間たちの声をニキータは今でも覚えている。その明かりがもう灯ることは無くても。

 ――世界が変わっていく。
 それはフェアリーに選ばれたホークアイの旅路に手助けでしか関われないニキータにすら分かる変化。言いようのない不安を否応なく抱えるニキータのことをホークアイは旅路の途中で出会う度に撫でてくれる。最初はぎこちなく、次は遠慮がちに、その次は躊躇して……でもいつからだろう。その手つきが柔らかくほどけ、あの砂の地で仲間たちと過ごしていた時のように戻ったのは。
 ニキータは自分で彼に何かが出来なかったことに悔しく思いながら、けれど〝何か〟が戻ったこと、笑ってくれることが嬉しかった。
この日もホークアイはニキータを遠慮せずにガシガシと撫でる。
「あ、アニキ~! 痛いですにゃ!」
「はっはっはお前の手触りがいいモンでな、そーらこしょこしょ~」
 その手が心地よく、……とても幸せで。
 喉を鳴らしていればほろほろと涙が勝手に流れる。
「ぐるぅうう……うなおう……アニキ、いま、しあわせ?」
「――ああ、幸せだぜ」
 にっと笑ったその顔は、ニキータのよく知る顔だった。

じゅうぶんおとな。