祝祭の明かり

また人様の創作に乗ってしまった……(たのしい)

一番最初は毎度おなじみぽんすけさんの絵が……最初です……!勝手にSSを付けて。今回本にするにあたりシャルアガも追加してお話にしました。
私が書く彼らのパーティの一番分かりやすい一本だと思います。サラマンダーのアウもちゃんと出ます。

元になったぽんすけさんの絵はこちらです!
https://poipiku.com/2725584/9832617.html

この後の漫画もぽんすけさんが描いていらっしゃいますが、ここに載せているお話はまた別の分岐をした話です。
それぞれの味でお楽しみ頂ければ……!

前半はジュウ終、後半はシャルアガの少女漫画展開をどうぞ。

ジュウベイ(イーストガード)×最終皇帝(男)=ジュウ終
最終皇帝の名前は「セシル」です。

シャールカーン(デザートガード)×アガタ(ホーリーオーダー女)
=シャルアガ

 日が落ちてきた頃を見計らい、家々の屋根に明かりがひとつふたつ、と灯っていく。
 それはどんどん広がって、やがて村全体を昼間の如く明るくさせた。
 ――どうぞ祭に参加していってくださいませ。
 そうこの村の者に誘われたのはその日の昼。
 補給を兼ねて立ち寄ったその村で、間の悪いことにモンスターの襲撃を受けた。当然の如くモンスター討伐に名乗りを上げた皇帝一行は迎え撃ち、無事にその襲撃を退ける事に成功した。
 幸いにも被害は少なく村人数人が軽い怪我を負った程度で収めることが出来たことに胸をなで下ろしたものの、あまりのタイミングの良さに皇帝を狙った襲撃だったのではないか、という疑念のため補給を済ませ次第その村を後にしようとしていたけれども……先の言葉のように、引き留められた。
 偶然にも、その日は一年に一度の祭の日であったのだ。
「幸いの日に訪れて頂いたのも何かのご縁。どうぞ、どうぞ楽しんで行ってください」
 そう言われて真っ先にアウが「参加しましょうよ陛下!」と叫び、「じゃあそうしよっか」とセシルが同意し、「お前(め)さんが決めたならそれでいいぜ」とシャールカーンが追従したものの、「陛下、本当によろしいのですか?」「私は賛同しかねます」とアガタとジュウベイが渋っていたが、焼け石に水である。
 その流れを思い出しながら、ジュウベイは聞こえてきた軽快な弦楽器の旋律に、はあ、とため息をついた。
「どしたの、ジュウベイ。せっかくの祭なんだから楽しまなくっちゃ」
「……随分と楽しんでいらっしゃいますね、陛下」
 両手に湯気の上がる大変香ばしく食欲を誘う匂いを漂わせている串焼き肉と、飲み物の容器を持って祭を楽しんでいる皇帝セシルの様子に少し棘を含ませてジュウベイは言う。
「お祭りは良いものだよ。なんてったってみんなこれ無料でくれるからね!」
 セシルは両手を掲げてから串焼き肉に歯を立てた。
「支払いされていないのですか!?」
「だってくれるんだもの。もらうでしょ」
「何をなさっているのですか! 皇帝陛下ともあろう方が!」
「大丈夫だよ、ちゃんと明日でていく前に村長にまとめて払うし」
「しっかりと店主に払いなさい! 貴方私よりも庶民生活が長いくせにどうしてそういう所は抜けているんです!」
 ジュウベイが怒りに任せてそう叫んでいると、目の前の皇帝はにっこにっこと笑っている。
「ほら、だって」
 どこ吹く風、セシルは串焼き肉の一番上の肉を歯で挟んで引き抜き口に入れ咀嚼する。それを味わってから嚥下する間に、ジュウベイの熱も下がっていった。
「君がそうやって指摘してくれるし、いっかなって。あとさ」
 う~ん、おいしい~、と串焼き肉の感想をもらしながら、セシルは悪戯に瞬きする。
「ちゃんと払って貰ってるから安心してね」
 ど、と頭のてっぺんに血が上る。だが同時に。
「陛下! よろしければ踊りませんか!」
「わ、いいね!」
 素早く残りの串焼き肉を食べ、残っていた飲み物を一気に呷った皇帝は近くにいた給仕に空いた入れ物を預けると手を拭きジュウベイの手を取った。
「ジュウベイ!」
「っ陛下!?」
 音楽が近づいてくる。先ほどまで遠かった弦楽器の奏でる音楽が。そこに合わせてリズミカルに太鼓が打ち鳴らされる。その共鳴は実に美しい。
 わあ、と歓声が上がる。誰かが歌い出せばそこにどんどんと声が重なっていき、ピィ、と指笛が星空を駆けてゆく。
 そうしていれば、いつの間にか二人はメインのダンスフロアになっている広場の中心にいた。
「ここでは笑顔が礼儀だよ。ほら、踊った踊った」
 どの口が言う、と思ったが、皇帝の手に引かれるがままジュウベイは一歩踏み出し踊りの供にされてしまう。だがうまく旋律に身を任せることが出来ず苦労していると笑い声が立った。
「あはは! 君でも苦手なものあるんだ!」
 何が楽しいのか、皇帝はジュウベイを振り回す。その姿に苦々しい思いを抱きながらも下手に感情を動かさないよう気をつけて――しかしその手を離さなかった。

じゅうぶんおとな。