黄金の皇帝の隣には、一人の男が立っていた。
その出で立ちはとても皇帝に釣り合うとは思えぬあまりに自由な出で立ちであった。
伸ばしっぱなしに見える焦げ茶の長髪を所々蒼に色づかせ無造作に流し、その髪をエキゾチックな模様のバンダナで巻き留め薄青の盾眼鏡 が整った顔の右目を覆う。
身に着けた防具は帝国兵の揃いの鎧とは違い肩や胸といった主要の部分以外には鎧を身に着けていない。機動性を重視しているのかほとんどを布地が覆う。しかし華美さを感じるのは大振りの石がはめ込まれた装飾品がじゃらりと首を回っているからだろう。
色合いに富むその男は周りの兵士が皆揃いの鎧を身に着け個性の無い風貌をしているためにより一層、異質に見えた。
だがぴんと伸びた背筋、前を見据える強い眼光、堂々とした佇まいはその場にいた者にしか分からぬ、気配、と言うべき何かを伝えてくる。
ああ、この男こそが――